- 低温調理ってどんな調理方法なんだろう?
- 基礎知識や注意点を知っておきたい
- 低温調理でできることって?
このような疑問に、低温調理歴2年ほどの僕がお答えします。
低温調理とは、ジップロックなどに入れた食材を湯煎する調理方法です。
水槽を使ったり、低温調理器が必要だったりで「何やら難しそう…」と感じている方も多いかもしれませんが、仕組みはいたって簡単です。
目次
低温調理とは?の疑問に答えます

低温調理は調理方法が独特ですが、そこまで複雑なものではありません。
まずは「どのような調理方法なのか」「どんな原理なのか」「どんな調理器具を用意したらいいか」を、注意点を交えてお伝えします。
低温調理の呼ばれ方
日本では「低温調理」という名前が一般的。
低温とは「100度以下で加熱する調理法」という意味で、食材をダイレクトに加熱せずに、温めた水の温度を食材に伝えます。
また、他によく見かけるのが「真空低温調理」という呼び方です。
こちらは、食材を入れて真空状態にしたポリ袋を調理に使うことから、そう呼ばれています。
なお、最初に低温調理が採用されたのは1960年代で「病院のパッケージ食品」むけに使われた技術だったようです。
その後、1974年にフランス人のジョルジュ・プラリュが「フォアグラのテリーヌ」のための調理法として開発したというエピソードは有名な話。
プロの厨房に普及したのは2000年代に入ってからなので、「古くからあるけど、最近になって普及した」というちょっと変わった調理法といえます。
文献によると、不気味がられてしまったせいで普及が遅れた調理法だったようですね。
低温調理とは、100度以下で加熱する調理方法
低温調理は、100度以下の低温で長時間加熱する調理方法です。
温度設定は40〜60度ほど、調理時間は1~3時間ほどが多いです。
温度・時間の組み合わせは「食材の厚み」や「お肉の部位」、「お肉の種類」によって違い、コラーゲンをゼラチン化させる場合などには10時間以上の時間をかけることもあります。
そうなると、ものすごく手間がかかりそうですが、実は超簡単。
やることといえば、ジップロックに食材を詰めて、低温調理器をセットするだけ。
加熱中は火を使わないので、ほったらかしでOKです。
低温調理器があれば、プロ並みのお肉料理が
お店で食べるようなお肉料理が、家にいながら作れちゃいます。
その理由は、低温調理では1度単位で温度をコントロールしてくれるから。お肉には「美味しくなる温度帯」というものがあり、低温調理ではその温度帯をピンポイントで狙うことができます。
気になる「お肉がおいしくなる温度帯」というのは、「50~65度」です。
お肉の美味しさを決めるタンパク質に、「ミオシン」と「アクチン」があります。
タンパク質はある温度を超えると「変性する」という性質があり、次の条件を満たすと「美味しい」という状態になります。
- 「ミオシン」が変性している(=50度以上)
- 「アクチン」が変性していない(=65度以下)
ミオシンが変性するとお肉がおいしくなり、アクチンが編成するとお肉は硬く・水分が抜けてしまうと言われています。
「お肉がおいしくなる温度帯」で調理したお肉は、安い肉であっても柔らかく・ジューシーに調理できます。
食材にお金をかけなくとも、低温調理器があれば十分に美味しい料理ができるのです。
時短ではない。でも手間なし。
低温調理は長い時間をかけて加熱するので、調理時間としては長めです。
場合によっては10時間とかかかるレシピもある。
ところが、加熱している間はほったらかしでOKです。
実際の作業は「食材をポリ袋に入れる」作業と、「仕上げ・盛り付け」をする作業くらいのもの。
実際のところ、調理の手間はほとんどかかりません。
水分や栄養素が逃げにくいのも魅力
低温調理では、水分や栄養素が逃げにくいといわれています。
他の調理法と違って真空状態にしたポリ袋の中で加熱するので、水分や栄養素が外に流れ出すことが少ないです。
また低温でじっくり加熱するので、高温で壊れてしまう栄養素も摂取することができるというメリットもあります。
低温調理で必ず必要な道具は3つだけ
実は低温調理の必需品は少なく、道具3つ揃えれば始められます。
- 低温調理器
- 水をはるコンテナ
- ポリ袋
低温調理器の役割は、コンテナ内の水温を上げ、一定の温度にキープし、水を攪拌するというものです。
低温調理器の選び方については、別記事しました。
» 参考:失敗しない低温調理器の選び方【おすすめの低温調理器も紹介】
水をはっておく入れ物(コンテナ)も必要です。
選び方の目安は「100度に耐られること」「深さがあること」「水量がある程度入ること」で、条件を満たせばどんな入れ物であろうと低温調理に使えます。
僕が低温調理をはじめたての頃は、家にあった「パスタ鍋」でした。
結論としてはなんでもOKですが、僕の使っているコンテナと合わせて次の記事で詳しく説明しました。
» 参考:低温調理コンテナ(容器・ナベ・水槽)選びのポイントとおすすめの容器【代用品も紹介】
ポリ袋は種類がありますが、「ジップロックフリーザーバッグ」が無難です。
大半のポリ袋は耐熱温度が書かれてませんが、ジップロックは「100度まで耐熱」と明記があります。耐冷温度も-70度まで、ポリ袋の厚みも他の製品より圧倒的に分厚いです。
真空パック器をお使いの方は、より頑丈な「ナイロンポリ袋」を使うことが多いと思うので、そちらでまったく問題ないと思います。
真空パック器を使わないで低温調理をする方向けに、次の記事でポリ袋の選び方を解説しました。
» 参考:低温調理におすすめのポリ袋と真空にする方法【浮く場合の対策もご紹介】
低温調理の基礎知識と注意点

「低温加熱」や「水槽を使う」など、ちょっと独特な「低温調理」。
まずはどんな調理方法なのかを理解しておくと失敗なく調理ができます。
気をつけることはいくつかありますが、食中毒の原因菌がすぐに死なない温度で調理するので、特に温度と時間は気をつける必要があります。
低温調理をするにあたって知っておきたい基礎知識や注意点をまとめました。
低温調理の原理
低温調理は、温めたお湯の温度で食材を加熱する方法です。
ガスコンロのように、【火→食材】とダイレクトに熱が移動するのではなくて【低温調理器→水→食材】と間接的に熱が伝わります。
温度変化をしにくい「水」を媒介にするので、一定の温度で加熱し続けることができるのが魅力です。
食中毒を避けるため長時間調理が基本
低温調理は、「数時間」単位で加熱するのがほとんどです。
フライパンで加熱する場合などは100度以上の温度で加熱することになるので、食中毒の原因菌は短時間で殺菌されます。
ところが、低温調理では長い時間をかけないと殺菌することができず、温度が低い分、長い時間殺菌温度に保つ必要があるのです。
では「低温調理は危険なのか?」という疑問には、「きちんと殺菌時間を確保すれば、危険性はかなり低い」と考えられます。
例えば、手元にある『家庭の低温調理』という本によれば次のようにコメントがあります。
低温調理の潜在的な危険性は、基本的に他の調理法と同じだということです。(中略)
病原菌の減少率は時間と温度の両方に関係するため、55度に長時間保たれた食品は実質的に殺菌されている(つまり、99%のバクテリアが死滅している)からです。
『家庭の低温調理』P18 食品安全より
正しい知識のもとで調理をおこない、温度や時間を決めれば至って安全な調理方法といえます。
安全な低温調理に必要な知識は、低温調理の書籍から学ぶことができます。
» 参考:低温調理に役立つレシピ本、関連本、国などの公表資料まとめ
危険を避けるための知識については今後、別記事にまとめて行こうと思っています。(準備中)
低温調理でなにができる?【作れるメニューを紹介】

実際に低温調理したことのない方にとっては、低温調理でどんなことができるのかがいまいちピンときませんよね。
そこで、僕がこれまで実際に作ってみた料理をまとめました。
ここに書ききれなかったレシピや補足情報は、別記事に譲ったものもあります。まだ記事にまとめきれていないものも多いので、順次アップデートしていきます。
鶏肉料理
- 普通の低温調理
- よだれ鶏
- カオマンガイ
豚肉料理
- 焼豚(チャーシュー)
牛肉料理
- ステーキ
魚料理
- サーモンのミキュイ
発酵食品
実は、発酵食品系は低温調理の得意とするところです。
一定の温度で長時間調理が基本だからです。

低温調理器を使えば、R-1ヨーグルトを大量に増やせます。
やり方はカンタンで、市販のR-1ヨーグルトと、成分無調整牛乳・砂糖を、低温調理に43度10時間かけるだけです。
ヨーグルトメーカーで作るより格段に美味しくなり、温度や時間を変えることでカスピ海ヨーグルトなども増やせます。
» 参考:低温調理器でR1ヨーグルトを1,000mlに増やすレシピ【失敗なし】

おかめ納豆などの市販の納豆を使って、激うまな納豆を作れます。
納豆を増やすのって海外では割とポピュラーな方法のようで、普段の納豆に比べると格段においしい大豆の香りがふわっとする納豆を作れます。
大豆を水に浸したり、圧力鍋にかけたりといった下準備の後、納豆菌を混ぜて40度で10時間ほど低温調理にかければ完成です。
» 参考:納豆を低温調理器で作る方法を解説【ANOVAレシピ】

スーパーで買えるような甘酒も、自分で作ることができます。
砂糖なしでも甘味のある甘酒が作れます。おそらく麹を変えて試行錯誤すれば、最高の甘酒が作れると思ってます。(例えば、酒蔵から直接買ってきた甘酒とか…)もう少し工夫したら、記事を加筆修正するかもです。
低温調理があれば家庭でプロ並みの料理を食べれる

お肉の栄養素や水分を逃さずに調理できるのが、低温調理です。
- 低温調理は、湯煎により100度以下で調理する方法
- 時間はかかるが、手間はかなり少ない調理方法
- 肉の水分や栄養素が逃げずに、プロ並みの仕上がりに
- 食中毒を避けるために、長時間調理が基本
- お肉料理や発酵食品など、適用範囲は広い
水槽を使ったりと独特な調理方法ではありますが、食材に熱を加えて調理する意味では他の方法と同じです。
低温での調理ならではの衛生管理などはありますが、仕組み自体はそこまで複雑ではありません。
今では家庭用の低温調理器がカンタンに手に入る時代です。
基本知識をつけた上で、ぜひご家庭で低温調理を試してみてください。